同級生の肉体に溺れた元自衛官。定年後に始まった危険な関係①

七月終わりの平日、猛暑日との予報通り地下鉄の改札を抜けて地上に出た瞬間、ジリジリと照りつける日差しが頭を焦がします。少し歩けばアスファルトの熱気が革靴を伝い、まるで真夏の砂浜を素足で歩いているような感覚です。

暑さのピークとなった昼下がりに、駅近くのファミレスで待ち合わせたのは五十八歳の男性、真人さんです。

約束の十五分前でしたがすでに席についていて、涼しげにコーラを飲んでいました。

事前に聞いていた簡単なプロフィールでは、高卒で自衛隊に入り定年となる五十代半ばまで勤め上げ、今は知り合いの紹介でトラックドライバーの仕事についているとのことです。

家族は奥さんと義母の三人暮らし。

二人いる娘さんは社会人となり、それぞれ一人暮らしをしているとのこと。

真人さんの見た目は若々しく、こんがりと日焼けした肌とポロシャツの袖がはち切れそうなくらい盛り上がった上腕の筋肉が目を引きます。

五十八歳と伺いましたが、もっと若く見えますね、と言うと

「日焼けは犬の散歩ですね。身体は昔からの習慣で鍛えていないと落ち着かないんですよ。筋トレだけじゃなくて他に趣味を持とうと釣りやロッククライミング、登山とかやってみたんだけど結局合わなくて。一人で好きな時に、自分のペースでできる筋トレが一番合ってますね」

そう言うと白い歯を覗かせ微笑む真人さんはこの駅前にあるフィットネスジムに週三日は通っているとのことでした。

しかし以前は別のジムに通っていたそうで、そこを辞めることになったきっかけが、今回伺うある女性のお話です。
真人さんの生い立ちからお話を伺っていこうと思います。

「何て言うんですかね、僕の周りにはいつも女がいるんですよ。いや、モテるとかそういう自慢じゃなくて、生い立ちからがそうで四人姉弟なんです。姉が三人いるんですよ。良く言えばお姉さんに可愛がられた弟、みたいなね、そりゃ外だとそんな感じになりますけど家の中じゃ逆でしたから。外じゃ大人しく上品な姉たちは家では別人ですからね。女性の怖さというか、二面性を嫌というほど見てきましたよ」

当時を思い出すように、小さくため息をつくと

「しかも自営業で両親が忙しくしてたんで家の中のことを姉達が仕切ってたんですね。幼少期から姉なのか親なのかみたいな状況でしたから。それで僕もちょっと生意気な事を言ったりとか反抗したりもするわけですよ、親の代わりなんで姉たちにね。するとその後が凄いんですよ。とことん、容赦なくやっつけられるんですね。ずっと罵られてご飯や洗濯とかも僕の分は自分でやれ、ってなるんでね。女性の怖さを嫌というほど思い知りましたね。だから家の中じゃすっかり大人しくしてました」

そんな経験もあり、女性に対して恐怖感や嫌悪感があったといいます。

「思春期になると周りの友達は彼女つくるぞみたいな、そうなるわけですよ。でも僕は姉達への嫌悪感を女性全てに当てはめてしまってそんなに積極的になれなかったですね。友達からは、お前女の子に興味ないの?なんてからかわれましたけど、姉ちゃん見てるとそんな気にならないよ、って答えてたんです」

すると友達からは、姉とか家族は女じゃないだろ、と笑われました。

「私だって恋愛したかったし、性欲だってありましたからね、でも家に帰ると姉達が下着姿で堂々と居るわけですよ、風呂上がりなんかおっぱい隠さず出てきたりとかね。日常的にそんなのばかり見てると友達みたいに女の子への妄想とか裸への憧れが無くなってね」

そう聞くと女性経験も少ないのかと思いきや

「それが中学生くらいから、ずっと彼女が途切れたことなくて。告白されて付き合うんですけど自慢とかじゃなくて性格もあるんですよ。女の子の扱いをね、姉達からスパルタ式に叩き込まれてたというか、からかったり嫌なことは絶対しないし、怖さを知ってるから女の子には親切にしてましたからね、だからちょっと僕は手懐けやすいみたいに思われてたのかも知れないですね」

そして真人さんは中学生で初体験を済ませると、その後別れたり新しい彼女を作ったりと経験を重ねていったそうです。

「最初の彼女から、付き合う子とは最後までいくんです。でも長続きしない。大体一年経たずに別れちゃって、また新しい彼女ができての繰り返し。向こうから別れようってなるんですよね、飽きられちゃうというか。だから経験人数だけ増えてってね。でも周りの友達みたいに僕はそこまで性欲が強くないんですよ。やることやっといて説得力ないですけどセックスも向こうから誘ってくる場合が多くて、それでより親密になると最後には姉弟みたいになっちゃって、仲は良いけど恋愛対象とはかけ離れていく、みたいな」

家庭環境から若くして女性の扱いに慣れていた真人さん。
性格からか強引さや攻撃性のような荒々しさは持ち合わせていないようでした。
その分交際相手にとっては安心できる存在であるものの、物足りなさを感じてしまうこともあるのかも知れません。

そんな真人さんですが、意外にも高校卒業後に自衛隊に入隊する道を選びます。

「家を早く出たいと思ってたんで、大学に行く気はなくて就職するなら一人暮らしか寮のあるところ、って考えてると自衛隊が良いんじゃないかと」

軽い動機の割には意外にも厳しい訓練や上下関係にも音を上げることはありませんでした。

「適応力と体力はあるんですよ。キツかったけどなんとか耐えられましたね。それに寮の生活は家よりぜんぜんマシで姉達のプレッシャーに比べたら楽でしたよ。それに仲間が居るのは大きいですよね。同じ苦しみを乗り越えてきた同期とは今でも付き合いがありますよ」

そして人生で初めてすべての女性から離れて過ごすのは、心地よくリラックスできた日々でもありました。
女っ気が無いことは真人さんにとって苦にならなかったそうで、

「しばらくはね、女の子はいいやと個人的には思ってましたよ。でも同期はそうじゃない。お互い打ち解けていくうちに女の子を紹介してくれってなるわけですよ。若い自衛官なんて訓練でどれだけ疲れようが性欲はいつでもMAXみたいな、どこにそんな元気があるんだってね。そんなですよ」

同期数人から頼み込まれ、親切な真人さんは仕方なく昔の知り合いなどに連絡をとることに。
そして飲み会を開くこともしばしばあったそうです。

「感謝されましたね、みんなから。その飲み会が縁で結婚までいった同期もいましたから。だから僕もやって良かったなぁ、なんて思ってました」

そして飲み会をきっかけに輪が広がり、真人さんが知らない女の子が来たり、逆に呼ばれて参加する立場になると、自分はいいから他のヤツ誘ってやってくれと言ったそうです。

「でも周りが僕に来てくれっていうんですよ。理由は簡単で僕は自分からアプローチしないんで重宝がられてね。まだ彼女に縛られる生活はしたくなかったんで、楽しく飲んで食べて満足してましたね」

そんな消極的だった真人さんでしたがある時、

「飲み会で二回ほど顔を合わせた女の子で、よく喋る明るい子でね。話してるうちに俺に紹介したい友達がいるっていうから今度連れてくれば、って言ったんだけど、飲み会とか苦手な子なのよ、って言うんでね」

その後連絡があり、その女性と紹介したいという友達と三人でデートをすることになりました。

「連れてきた友達が今の妻なんですよ。紹介してくれた友達は今も仲良くしてて、飲み会に行ってたのは自分と妻、両方の相手を探してたらしくて、妻と気が合いそうな僕を見つけたんで紹介したくなったって言ってましたね」

しばらく付き合う気のなかった真人さんが結婚しようとまで心変わりした理由とは?

「素直で優しくてね。最初は僕も様子を伺ってたけど、ほんとに裏のない人でね。その人柄にだんだん惹かれていったんです。なんていうか女性で初めて。尊敬できる人に出会ったと思いました。それと考え方が似てたし、身体の相性も、僕も妻もそんな性欲が強い方じゃないんで。それでこんなに自分と合う人はなかなか居ないだろうって思えたんです」

次の記事…同級生の肉体に溺れた元自衛官。定年後に始まった危険な関係②

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この記事を書いた人

〖プロフィール〗

〖妻と愛犬と暮らす50代サラリーマン〗

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