夫の不倫で気付いた本当の家族の繋がり…妻の心の変化②

「スマホを持った時に照明の角度で微妙に指の跡が見えるんです。簡単なパターンだったけどなかなか思いつかないもんですよね。それでようやく開くことができて。でも緊張しましたよ。これで何か見つかったら、後戻りできなくなるのかなって。知らないまま過ごせば、平和な日常が続いてたんじゃないかって。それでスマホを持ったまましばらく考えてたんです。でも私が感じた違和感が思い過ごしならいいし、本当のことを知りたかったから中身を調べました。でも何も無いんですよ。大体、女性の知り合いがほとほと居ないし、やりとりした様子も無いし」

やはり思い過ごしなのかも。
また何か気になるならロックパターンは解るしその時確認すればいい、と思うことにした桐子さん。

そんなある日、明日は会社の送別会だから遅くなると言い、風呂に入った健次さんのスマホがリビングの定位置に無いのに気付きました。

スーツの上着を探ってスマホを手に取った瞬間でした。バイブレーション機能で手の中のスマホが震え、声が出そうなくらい驚いた桐子さん。
短い着信でした。表示を確認すると、『総務 唐木』と出ています。

「何か妙だなと思ったんです。ワン切りみたいな着信もそうですけど、総務 唐木って同じ会社の人なら部署名なんて入れて登録するかなって」

さらに不思議なのは風呂から出てスマホを手にとった健次さんが、着信があったにも関わらず気にする素振りも見せないことでした。

「おかしいですよね、だって普通なら、あっ、って気付いて折り返すと思うんですよ。それが全く当たり前のようにスマホを弄ってるんです。わざわざ近付いて見るのも変だからチラチラ様子は伺ってたんですけど何をしてるかまでは分からなかったんです」

翌日の朝、今日は飲み会だからと出勤した健次さんが帰宅したのは日付が変わる頃でした。

玄関のドアが開く音に気付いて飛び起き、健次さんを喜んで出迎えるフー。
飛びつきクンクンと嗅ぐと、くしゃみをし始めます。

玄関の物音に目覚めて桐子さんも出迎えると、ばつが悪そうに言い訳する健次さん。

「ずっとフーがくしゃみをするんで、消臭剤の匂いに反応してるのかな、って言うと、そうなんだよ、飲み会で変な匂い付いちゃったからスプレーしたんだよ、って言うんですけどね」

そう言うとしばらく考えを整理するようにうつむいた後、

「やはり夫は何か隠してると思ったんです。態度や言葉使いにどこか引け目を感じてるような、そんな気がしました。でもどうやって調べたらいいのか分からなくて。飲み会とか、会社の付き合いで帰宅が遅くなるのは前からあったんで、毎回嘘をついてるとは思えないし。探偵とかに頼むとなると、調べたら費用もだいぶ掛かるみたいだし難しいなって」

手だての無いまま、悶々とした日々を過ごしていた桐子さん。
すると健次さんは以前より休日に出掛ける頻度が多くなってきたそうです。
以前は月一くらいの頻度だった趣味のゴルフはコースに出たり打ちっぱなしに行ったりと急に熱を入れ始めます。
健次さん曰く、会社で新しいゴルフ仲間が加わったからみんな熱が入り始めた、とのことでした。

そのおかげで以前のように桐子さんの買い物に付き合ったり、外食をして二人で過ごす休日はめっきり少なくなります。

ある日の休日。思い付いたようにゴルフの打ちっぱなしに行ってくると告げる健次さん。その態度に違和感があり、とっさに桐子さんは私もいってみたいな、とかまを掛けてみました。

するとほんの一瞬、表情がこわばった健次さんでしたが

ん?どうしたの?ゴルフやる気になった?

平静を装い聞き返す健次さんを見ながら何かおかしい、と桐子さんは確信します。

「でも、やっぱりケガしたら困るからやめとこうかな、って言うと、徐々にやれば大丈夫だと思うけどね、なんて夫は言いながら安心したように見えたんです。それで出掛けるまでの間に夫の目を盗んで車にボイスレコーダーを仕掛けました」

そうして出掛けてから四時間後、健次さんは帰宅します。フーが近付いてくしゃみをされるのを避けるように、シャワーを浴びると言い、すぐ浴室に入りました。

「シャワーを出す音が聞こえてからボイスレコーダーを回収しました。四時間三十二分と録音時間が表示されていたので無事録れていたんだと安心しました。ボイスレコーダーを手にすると探偵の真似事みたいでドキドキして、罪悪感もありましたけど妙に興奮してすぐにでも聞いてみたい感情を抑えながら、明日パートから帰って一人でゆっくり聞いてみることにしました」

翌日、パートから帰りフーの散歩を済ませた桐子さんはボイスレコーダーをパソコンに接続します。再生を始めると健次さんが車に近付くところからしっかりと音が録れていました。

「座席の後ろの収納の奥に見付からないように押し込んだ割には、クリアな音声で録音できてたので驚きました」

健次さんが車を走らせてから三十分程経った頃、ウインカーの音を鳴らしてタイヤの軋む音がして駐車場のような場所に停車したように思えました。

そのまま静かにエンジン音だけが再生された二、三分後でした。
突然、誰かがガチャッとドアを開けて車に乗り込んでくるのでした。

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この記事を書いた人

〖プロフィール〗

〖妻と愛犬と暮らす50代サラリーマン〗

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