差出人不明の封筒から元夫の浮気を知ることになる里子さん。
元夫との生活、そして義両親たちとの関係に違和感を覚えるも、一人息子が自立できるまでは耐えることを決めました。
十数年、気の遠くなるような先の話ですがどんな生活を里子さんは送ってきたのでしょうか。
そのお話しを伺ってみます。
女遊びを繰り返す元夫。そして三年後に同じような封筒が届く
「元夫はとにかく面倒なことから逃げる人でした。キレたり、不機嫌になることは無いですけど真剣に話をするとボソッと意見を言うだけ、私に任せっきりでした。息子のことを相談しても変わらないですね。関心が無いというか感情がどこか欠損しているような、普通じゃないところがありましたね」
写真が届いた後も、浮気は続いていたんでしょうか?
「続いていたと思います。いろんな口実をつけて女遊びをしているのは見ていると分かりました。飲み会、休日のゴルフ、半分以上は嘘だったと思います。それに差出人は分からないですが、三年後にまた同じような封筒が届きましたから」
前回と同じ浮気現場の写真がまた届いていた。
「相手の目的もなにも分からないので、もし息子に何かされたら、と思うと心配になってしばらく警戒していました。何も無くて良かったんですけど、写真の方は前回同様バッチリ写っていましたから保管させてもらいました」
運良く、と言うべきか離婚原因となる証拠を手に入れることができた。
「離婚しよう、と決めてから二三年はまだ迷いもあったし何度も考えました。でも答えは変わらなかったですね。そしたらダメ押しの写真が届きましたから」
ちょうどいいタイミングで、と笑う里子さん。
「それからいろいろありましたが、息子も中学生になり手が掛からなくなってきたので自立するために働きに出ようと思いました。どんな仕事があるのか求人誌をみたり友達に相談したりしましたが十五年も専業主婦だったので不安でした。悩んでいたところ相談した友達から連絡がありました」
連絡をくれたのは高校の同級生Kさん。
Kさんと里子さんは同じバレー部に所属していた仲間でした。
Kさん曰くバレー部の一年先輩だったMさんが、ご夫婦で花農家を営んでおり、慢性的な人手不足に悩んでいるとのことでした。
Mさん…確か小柄で運動神経の良い人だったような、と里子さんは記憶を辿っていました。
「でも休みがさ、不定期みたいで土日も関係無くやるから来てくれる人が居ないって前にこぼしてたんだよね」
花農家、不定期な休み。
考えた末働くことを決めた里子さん。
農家というとハードな労働のイメージがあります。
どちらかといえば室内の作業よりは外に出て体を動かす方が性に合っているそうです。
ただ、今の自分にどれだけ体力があるか分からないということでしたが…
「悩みましたが働かせてもらうことにしたんです。予想通り体力を使う仕事で慣れるまではきつかったですね。でもMさんも旦那さんも人柄が良く気遣いもあって働きやすい環境でした。おかげで今も続けてるんです」
自分に合った仕事が見つかり安堵した里子さん。
しかしその後…
「仕事に慣れてきた頃、心筋梗塞で父が亡くなったんです。まだ70歳になったばかりで何の前触れもなく突然でした。父が亡くなり実家では母が一人で暮らしています。三つ下に弟がいますが東京都内の会社に勤めているので実家には滅多に帰ってきません。まだ元気な母ですが一人なので様子は見に行くようにしていました」
父親が亡くなり落ち込んでいた里子さん。
そのうえさらにショックな出来事が起こります。
「高校二年生になった息子には一年以上お付き合いしていた彼女が居ました。よく家にも遊びに来ていて明るく私ともよく話をする人懐っこい子でした。笑顔が可愛らしくて、こんな子が自分の娘だったら良いのになぁ、って会うたび思っていました」
息子さんにとって初めての彼女のようだった。
里子さんは成長するにつれ会話が少なくなった息子に、元夫と同じような過ちを犯さないようにと思い言い聞かせていることがありました。【身勝手に彼女を泣かせるようなことは絶対にしてはダメだ】と。
「しばらく彼女を見てないなぁと思っていたある日、家の近くで息子と彼女を見かけたんです。様子がいつもと違うので気になって見ていると、彼女が足早に離れて行きました。顔を見ると泣いているようでした」
里子さんが家に着くと息子もすぐに帰って来ました。
さっき見たことを話して何かあったのか聞いたそうです。
「彼女と別れた、と息子が言ったんです。そう聞いてさっき見た彼女の泣き顔が目に浮かんできました。
息子に問いただしたんです。【何があったのか】って。しばらく黙っていた息子でしたが、私の真剣さに押されたようで渋々理由を話しました。すると【俺に他に好きな子ができたからだ】って」
そう聞いて里子さんは混乱したそうです。
父親が亡くなって情緒不安定になっていた里子さん。他に好きな子ができた、という受け入れがたい言葉とさっきの彼女の泣き顔が頭の中でぐちゃぐちゃになっていました。
もういい?と自分の部屋に行った息子。
後を追い掛け、不機嫌そうにベッドでスマホを弄る姿に里子さんは憤りを覚えました。
「心を落ち着かせながら聞いたんです、彼女が何かしたのか、って。すると面倒臭そうに息子が答えました【俺が他の女に乗り換えただけだ】って」
その返事を聞くと反射的に息子の胸ぐらを掴み、頬を叩いた里子さん。
「悲しみや怒りが溢れてきて涙が出ました。どこで手を止めていいかも分からず、涙で息子の顔もよく見えないまま頬を叩き続けました」
よく見ると息子も泣いているようでした。
「暴力を振るったのは生まれて初めてでした。今になってその時の感情を整理できるんですけど、息子が元夫のような酷いことをする大人になるなら私が止めなければならない、そう思って感情的に追い詰められ頬を叩いてしまったんです。
でも息子も彼女にしたことを後悔していたと思います。泣きながらずっと頬を打たれてましたから」
それからしばらく、家庭内では息子さんともギクシャクしていたそうです。
今、高校二年生の息子はおそらくあと一年で大学進学とともに家を出るだろう。
真っ当な人生を送れるように、私は息子を育てることができただろうか。
そんなことを考えながら、里子さん自身も離婚することができるのか不安でもありました。
これまでのこと、これから先のこと、何度も頭の中で整理して自分の気持ちと現実との間に折り合いをつけていました。
そして考えた結果、息子を送り出した後、やはり自分も離婚し家を出ようと決心した里子さん。
一年後に向けて準備を進めていた里子さんでしたが、予期しなかった出会いが訪れることになります。
次回はその出会いと離婚したときのお話しを伺ってみます。
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